HOME >> 圓朝作品のあらすじ >> prev 怪談牡丹燈籠 next
怪談牡丹燈籠   
−かいだんぼたんどうろう−

 圓朝の代表作.若林王甘[カン]蔵・酒井昇造によって速記され,和綴じ本として明治17年に出版された大ベストセラー.言文一致運動にも影響を与えたことでも知られている.カランコロンの下駄の音で知られるお露の幽霊のストーリーと忠僕孝助による仇討のストーリーが交互に絡み合いながら進行してゆく.現在は,刀屋の名を持つ発端,お露と新三郎の馴れ初め,お札はがし,栗橋宿が演じられる.

 大あらすじ
 牡丹燈籠を提げて通ってくる幽霊と契った新三郎は変死.幽霊と取引をした伴蔵は金と女のために殺人を犯す.忠僕孝助はみごと仇討をとげる.
 本郷の刀屋
 発端は寛保3(1743)年,飯島平太郎,本郷の刀屋藤村屋で黒川孝蔵に絡まれ,黒川を斬る−飯島の父死亡−平太郎,名を平左衛門に改める−りえ,息子の孝助をおいたまま越後へ/1745年,りえ,樋の口屋と再婚/1759年,お国,飯島平左衛門の妾に
本郷三丁目本郷薬師
 臥龍梅の梅見
 1760年2月,亀戸の梅見の帰り,山本志丈の仲介で萩原新三郎と飯島の娘のお露が柳島の寮で出逢う−3月,孝助が飯島家の新参の家来になる.ある日,孝助は自分の父の黒川孝蔵の仇を討ちたいともらす.飯島,剣術を教え助太刀することを約束.いつか孝助に討たれる決意を固める/お露,萩原に焦がれて死亡.後を追うように米も死亡
広重 亀戸梅屋舗
 闇に響く下駄の音
 7月13日からお露の亡霊が萩原の家を訪れる−20日,白翁堂,萩原の死相を見抜く.萩原,谷中新幡随院の墓場でお露が毎夜持ってくる牡丹燈籠を見つけ,お露が幽霊だと知る.新幡随院の良石からお札と仏像を借り受け,お露の亡霊を封じる作戦−21日,飯島の妾のお国と隣家の宮野辺源次郎とが密通していることを孝助知る−22日,相川五兵衛,孝助を養子に希望−23日,相川宅からの帰り道に孝助を待ち伏せして殺そうという源次郎の計画失敗
新幡随院牡丹燈籠碑
 お札はがし
 伴蔵宅を幽霊が訪れる.百両とひき替えにお札はがしを約束−24日,飯島家の百両紛失.お国,孝助に罪をなすりつける−伴蔵,幽霊から百両受け取る.お札をはがし,仏像をすり替える.翌朝,萩原は死んでいる−8月3日,隣家の源次郎がしのんできたと見誤り,孝助,飯島を槍で刺す−孝助の仇が自分だと瀕死の飯島が打ち明ける.孝助,相川の許に−源次郎とお国逐電.孝助敵討に出発

谷中三崎
 栗橋宿
 伴蔵,幽霊からもらった百両を元手に栗橋で荒物屋の関口屋をはじめる−1761年7月,栗橋に流れてきたお国との密通に感づいたお峰,嫉妬のあまりを旧悪を漏らしかねない.お国を幸手まで買い物に連れだし,幸手堤で殺す−お峰の霊,関口屋の奉公人に次々と取り憑いてうわごとを言う−初めて関口屋を訪ねてきた山本志丈を奉公人は見知ったようなうわごと.結局,奉公人は全員解雇.やむなく志丈に事情を話す.お国との関係を強請に来た源次郎を追い返し,江戸へ出立

幸手堤
 宇都宮の大団円
 8月3日,孝助,帰京/伴蔵,埋めておいた仏像を掘りだした後,山本志丈を殺す.そこへ孝助が通りかかり,伴蔵は捕縛される−神田旅籠町の白翁堂の所で偶然,母のりえに出会う−6日,宇都宮のりえの許に匿われている源次郎らを討ちに出立−9日,りえ,源次郎を見殺しにできず,彼らを逃がして自害−孝助,十郎ヶ峰まで追いかけ,源次郎とお国を討つ

十郎ヶ峰三角点

 はなしの足あと
 本郷三丁目(文京区)で黒川孝蔵が殺された17年後,臥龍梅(江東区)の梅見の帰り,お露と新三郎が出会う.お露が葬られたのは谷中三崎新幡随院(台東区谷中,足立区に移転)で,幽霊が訪れるのは根津清水谷(文京区根津)の萩原宅.孝助は水道端(文京区)の相川宅の帰りに大曲で待ち伏せされたが,隆慶橋(ともに文京区後楽)を通って辛くも助かる.伴蔵は栗橋で荒物屋を開き,お国は越後の村上から栗橋に戻る.お国を探すことができず江戸へ戻った孝助は,水道端から白山を通って新幡随院を訪れる.神田旅籠町(千代田区外神田)の白翁堂の所で母と再会,宇都宮の仇討となる.
 はなしの人びと
相川新五兵衛 あいかわしんごべえ (1706-) 水道橋.孝助を娘お徳の養子にと飯島に懇願.
飯島平左衛門 いいじまへいざえもん (1722-1760.08.03) 平太郎の名の時黒川斬る.お露の父.黒川の子の孝助にあえて槍で刺し殺される.
久蔵 きゅうぞう   栗橋の馬子.伴蔵とお国の仲をお峰に話す.
くに (1735-1761.08.09) 飯島の妾.宮野辺と密通,逐電.孝助に殺される.
黒川孝蔵 くろかわこうぞう (-1743.04.11) 元小出家の家来.飯島平左衛門に斬られる.
孝助 こうすけ (1740-) 飯島の下男.実は黒川の子.誤って萩原殺す.義姉の国と宮野辺ら討つ.
つゆ (1744-1760) 1760年2月に会った萩原に恋がれ死ぬ.幽霊となり,萩原殺す.
とく (1743-) 相川の娘.孝助と結婚.直ちに孝太郎もうける.
伴蔵 ともぞう (1723-1761頃) 萩原の長屋.お露から百両もらいお札はがし.栗橋で荒物屋関口屋.お峰殺し逐電.死罪.
萩原新三郎 はぎわらしんざぶろう (1740-1760.07.24?) 根津清水谷の貸長屋業.お露の幽霊に取り殺さる.
白翁堂勇斎 はくおうどうゆうさい (1692-) 八卦見.萩原の死相を見破る.
樋の口屋五兵衛 ひのくちやごへえ   1745年りえを後添にする.お国の父.
みね (1726-1761.07) 伴蔵の妻.伴蔵に殺される.死んだ後奉公人に取り付く.
宮野辺源次郎 みやのべげんじろう (-1761.08.09) 飯島の隣家の次男.お国と密通.飯島殺し逐電.
山本志丈 やまもとしじょう (-1761.08.04?) 幇間医者.お露に萩原を紹介.関口屋で伴蔵と再会.伴蔵に殺される.
よね (-1760)  お露の女中.
りえ りえ (1718-1761.08.09) 孝助の実母.樋の屋の後妻.お国ら逃がし自害.
良石 りょうせき (1710-,1713-とも) 新幡随院の和尚.萩原に海音如来とお札渡す.

若林王甘[カン]蔵:王偏に甘

掲載 090101/最終更新 210101

HOME >> 圓朝作品のあらすじ >> prev 怪談牡丹燈籠 next