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豊島区   
怪談乳房榎と申しますお話は、江戸名所圖會にも出てをりますが、高田砂利場村の、大鏡山南藏院といふ眞言宗のお寺の天井へ、雌龍雄龍を墨繪で書きました菱川重信といふ人のお話で
 (三遊亭圓朝(1) 「怪談乳房榎」)
  鈴木行三編,『圓朝全集』 第八巻,春陽堂(1926)

地点名 この1題・登場回数 位 置 備 考 写真と撮影年
茗木坂 みょうぎざか 王子の狐(旺国馬生1:02) 1件1題 (東京1件) 豊島区駒込2〜3 妙義坂.駒込駅前を北へ下る坂で,坂途中の西に妙義神社がある.「王子の狐」の道中付けで出てくる.写真の奥に見えるのは,妙義坂子育て地蔵.
"駒込へ出て茗木坂という坂を下りて"(王子の狐)
妙義坂 2009
染井 そめい 敵討札所の霊験(角川円朝2:03) など 4件3題 (圓朝1件, 東京3件) 豊島区駒込 → 北村辞典.染井の里は,植木や菊で有名だった.染井の名をつけた,ソメイヨシノの発祥地でもある.巣鴨駅ガード脇に染井吉屋野とだけ刻んだ碑がある.
"ちょうど白山に懇意なものがおりまして、あちらの方はあの団子坂の方から染井や王子へ行く人で人通りも有ります"(敵討札所の霊験)
染井吉野碑 2009
西巣鴨のお岩寺 にしすがものおいわでら マラなし芳一(快楽亭ブラックの放送禁止落語大全, 洋泉社 (2006)) 豊島区西巣鴨4-8 法華宗妙行寺.1909年,四谷鮫ヶ橋から移転してきた."西巣鴨の"とあるので豊島区に分類した.移転前の妙行寺やお岩墓は,春錦亭柳桜の怪談噺「四谷怪談」に出てくる.うなぎ供養塔は,東京蒲焼商組合・東京淡水魚組合が1960年に建立したもの.新しい塔婆があがっており,今も供養が続いているらしい.
"お詣りに行きましたよ。西巣鴨のお岩寺"(マラなし芳一)
妙行寺うなぎ供養塔 2006
庚申塚 こうしんづか 阿武松(青圓生08:05) など 6件2題 (東京6件) 豊島区巣鴨4-35 → 北村辞典.中山道沿い,猿田彦を祀るお堂があるが,庚申塔も塚も見えない.もとは文亀2年の巨石の庚申塔で,明暦の大火で折れて建てかえたという.それが堂内にある.
"ここが巣鴨の庚申塚という所だ。にぎやかだろう"(阿武松)
庚申塚 2009
とげ抜き地蔵 とげぬきじぞう 佃祭り(青金馬:07) など 7件4題 (東京7件) 豊島区巣鴨3-35 → 北村辞典.曹洞宗萬頂山高岩寺.明治期に下谷上車坂町(台東区上野7)から移転してきた.移転後の用例しかないので,豊島区に分類した.とげ抜き地蔵参道はお婆ちゃんの原宿として,中高年向けの衣料品などの店が並び,いつ行ってもごった返している.
"とげ抜き地蔵ッてのは外科専門ですな。なかに、戸隠様ッてのは、虫歯の神様"(佃祭り)
高岩寺 2019
六地蔵 ろくじぞう 吾妻の猪買い(定本 九州吹戻し, 新人物往来社 (2001)) 豊島区巣鴨3-21 「吾妻の猪買い」の道中付けなので,中仙道に沿った真性寺に安置された銅製六地蔵のこと.巣鴨駅前に現存する.傷みがひどいため,2010年にかけて修繕が行われた.
"地蔵坊正元が供養の為と建立せし江戸六地蔵"(吾妻の猪買い)
真性寺六地蔵 2011
大塚駅 おおつかえき 綴方狂室(毎日三百年3:09) 1件1題 (東京1件) 豊島区南大塚3 おおつか〜といえば,かどま〜ん.
角萬とは何ぞや? とだけ大書された,意表を突いた広告が,戦後の焼け跡に突如あらわれたという.ひさびさに大塚を訪れたところ,角萬ビルに小さなチャペルがテナントとして入っているのに,何かほっとした.そう,角萬は結婚式場.
"大塚なびっくり度胸を定め"(綴方狂室)
大塚〜第2角萬ビル 2011
六ツ又陸橋 むつまたりっきょう 火打ち駕籠(楽語・すばる寄席, 集英社 (2006)) 豊島区東池袋2 池袋東口北にある六差路.柳家喬太郎演じる「火打ち駕籠」に,パルコや豊島区役所などと一緒に出てくる.タクシーの女性運転手の独白で,過去の女駕籠かきと現代が重層する噺.タバコの火玉を手のひらで転がすシグサが印象に残っている.
"区役所の前を通って六ツ又陸橋をくぐる"(火打ち駕籠)
六ツ又陸橋 2009
豊島清掃工場 としませいそうこうじょう としては(柳家花緑の同時代ラクゴ集, 竹書房 (2016)) 豊島区上池袋 「としては」は,擬人化された高層建築物がお互いの高さを自慢する新作.豊島清掃工場の煙突は,210mの高さ.焼却炉の煙突という限定つきで世界一の高さだという.
"焼却炉の煙突『としては』池袋の豊島清掃工場煙突が世界一"(としては)
豊島清掃工場煙突 2019
池袋 いけぶくろ 幽霊タクシー(普通名作5:08) など 11件11題 (東京11件) 豊島区池袋付近 池袋くらい田舎になると,古典落語の舞台にはならない.「幽霊タクシー」は,鶯春亭梅橋作,柳亭痴楽演の新作落語.深夜,青山墓地までの女客を乗せたタクシーが,墓地に着いてみると客はおらず,シートがぐっしょり濡れていた.そんな話をしていると,青山行きの女客が本当に現れる.
"池袋で客をおろしてこっちは空車で新宿へいこうと思ってね"(幽霊タクシー)
池袋駅タクシープール 2011
池袋演芸場 いけぶくろえんげいじょう ぜんざい公社(新風新作:2) など 7件7題 (東京7件) 豊島区西池袋1-24 ビル3階にあった畳敷きの寄席.客の入りが悪いことで知られていた.1990年いったん閉場したが,西池袋1-23に場所を改めて仕切り直ししている.新作落語での登場例がどんどん増えている.
"池袋演芸場。これがまた、大変な寄席でして、駅前にあるのに、駅から見てもわからない。そばまで行っても気がつかない"(ぜんざい公社)
池袋演芸場 1984
ビックリガード びっくりがーど 東京足立伝説(円丈落語全集 3, 円丈全集委員会 (2022)) 豊島区西池袋1 「東京足立伝説」は,足立が世界の始まりだという神話めかした新作落語.池袋駅の南,山手線をくぐっていたガードが,ビックリガードと呼ばれていた.名前の由来は諸説あるらしいが,ガード南入口に掲げられた由来説明板によると,昔のガードはもっと高さが低く,頭の上を通る列車の音に,人馬がビックリしたということだ.1963年に現在のようなしっかりしたガードになったという.また,ガード脇の壁には,雑司が谷いろはがるたが描かれている.池袋ではないが,人が立って通れないほど高さが低く,ここを車でくぐろうとすると,意味もなく運転手が首をすくめてしまうガードがあり,びっくりガードと名づけられている.
"この洞窟が、後のビックリ・ガードになったんです"(東京足立伝説)
ビックリガードの由来説明板 2022
雑司ヶ谷 ぞうしがや 風呂敷(新風艶笑:03) など 3件3題 (東京3件) 豊島区雑司が谷,南池袋 → 北村辞典.雑司ヶ谷墓地が大きな敷地を占めている.夏目漱石,竹久夢二,永井荷風らの墓が有名だが,上方落語に残っている盗賊の「鬼薊清吉」の墓がある.鬼薊清吉の墓は,移転前の台東区に分類している.日蓮宗法名寺(南池袋2)には,2人の名人,四代目橘家圓喬と三代目柳家小さんの墓がある.筆もつて月と咄や冬の雪.
"浅草の一件や雑司ヶ谷の一件なんぞも、顔の知れねえ者じゃあ、ああはなかなか収まらねえ"(風呂敷)
橘家圓喬墓 2009
鬼子母神(雑司ヶ谷) きしぼじん 縁切榎(角川円朝4:05) など 5件4題 (圓朝1件, 東京4件) 豊島区雑司が谷3-15 → 北村辞典.日蓮宗法明寺の鬼子母神堂.ススキミミズクが名物.境内の駄菓子屋(飴屋)の川口屋は江戸元禄期から続いている.
"余りよい神様はありません、お岩稲荷、鬼子母神、摩利支天様からそれからお狸様に、貰った御祝儀の紙"(縁切榎)
鬼子母神と川口屋 2005
宿坂 やどざか 高田日誌(本草堂散録, 相模書房 (2010)) 豊島区高田1〜2 宿坂(しゅくざか).本文ルビには"やどざか"とある.金乗院の東を北へ登る坂で,鎌倉街道の古道の跡ともいわれる.写真のお堂は,関口から金乗院に移転してきた目白不動堂.目黒不動が有名な,江戸五色不動の一つ.
"宿坂上の台地に富裕な商家、和泉屋の別荘がある"(高田日誌)
宿坂 2011
高田 たかだ 虫干(玄文珍日本:08) 1件1題 (東京1件) 豊島区高田 新作落語に登場するため,北村辞典には載っていないので,一応項立てする.高田は,面影橋の北にあたる.氷川神社自体は,小満んの「怪談乳房榎」に触れられる.最近あらためて訪問したところ,境内撮影禁止,玉砂利歩行禁止,ペット入場禁止との掲示.どこかの国境のように高い塀で囲えば,こんな写真を撮られることもなかったのに.
"今夜は高田へ行って蛍の旧跡をたずねたら"(虫干)
高田氷川神社 2017
砂利場 じゃりば 怪談乳房榎(角川円朝1:02) など 6件2題 (圓朝5件, 東京1件) 豊島区高田 → 北村辞典.高田の俚称.江戸には他にも砂利場の名がついた土地がある.高田2-2の氷川神社の橋柱などに砂利場の名が刻まれていた.
"高田砂利場村の、大鏡山南蔵院という真言宗のお寺の天井へ、雌龍雄龍を墨絵で書きました"(怪談乳房榎)
砂利塲石柱 2009
南蔵院 なんぞういん 怪談乳房榎(角川円朝1:02) など 5件1題 (圓朝5件) 豊島区高田1-19 → 北村辞典.真言宗豊山派大鏡山南蔵院.将軍鷹狩りの時に,どの方向からも入れるよう八つ門寺の別名がある.「乳房榎」では,この寺の格天井に龍を描く重要地名.龍の話はもちろん創作.円朝考文集刊行会らがたてた"名作怪談乳房榎ゆかりの地"という,うまいネーミングの説明板があがる.
"砂利場村の大鏡山南蔵院へやって参りました。あの寺は御案内の通り八門寺と申しまして、上様がお鷹野にお成りのござりました"(怪談乳房榎)
南蔵院 2009
山吹の里 やまぶきのさと 太田道灌(講明治大正6:24) など 4件4題 (圓朝1件, 東京3件) 豊島区高田あたり → 北村辞典.太田道灌,雨宿りの伝説地.逸話を伝える地はたくさんあるが,ここでは高田の例.その他,日暮里や新宿,遠く埼玉県の越生の説もある.面影橋の北東詰に,山吹の里の碑がある.
"山吹の里ッてえのは何処でございやす。これは高田の馬場の脇で、いまだに地名は遺ッている"(太田道灌)
山吹の里碑 2005
鼠山 ねずみやま 御盆(講明治大正5:70) 1件1題 (東京1件) 豊島区目白3, 4 → 北村辞典.怪しげな祈祷で法印が狐つきを落とす「お盆」という落語のマクラ.天保6年,谷中の感応寺が,安藤対馬守の下屋敷の一部に強制移転させられた.この鼠山感応寺が廃せられ,天保の改革で修験者がここに集められた.こんなことが落語の背景となっている.
"鼠山と申しますところへ、市中におります法印を、おいくこくってしまいました"(御盆)
雑司ヶ谷音羽辺図(近江屋板江戸切絵図) 2020
長崎 ながさき 按摩小僧(講小勝:17) など 2件2題 (東京2件) 豊島区長崎,南長崎あたり 皮肉っぽい語り口の五代目三升家小勝のマクラに出てくる.小勝は,昭和初めに個人落語集を出版している.用例は,全くの話が,東京西郊に開発された文化村のこと.文化村自体は新宿区に分類した.1930年代から長崎には,画家や小説家などが集まり住み,アトリエ村と呼ばれた.アトリエ村の一つ,さくらが丘パルテノンの様子が,豊島区立郷土資料館にジオラマ展示されている.大きな飾り窓を通して,絵画作品が出し入れされた.
"下落合、長崎などというところへ行くと文化村"(按摩小僧)
長崎アトリエ村(豊島区立郷土資料館) 2023

掲載 060310/最終更新 230901

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