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菊模様皿山奇談   
−きくもようさらやまきだん−

 圓朝初期の長編作品.もとは道具入り芝居噺.明治4年に草双紙として出版.後に「菊模様千代亀鑑」のタイトルで新聞連載.大分省いて図にしたが,実際は100人近く登場人物がある.芝居噺としては彦六の正蔵が演じた「楼門の場」の画像が残る.松蔭が妖術を使い,巨大な蝶になって飛び去る場面.

 大あらすじ
 松蔭大蔵らはお家乗っ取りを計画.邪魔になる渡辺織江を殺し,病身の紋之丞をなきものにしようと毒虫を集める.忠臣権六や織江の子の祖五郎らによって,松蔭は追いつめられる.
 美作小皿山の由来
 美作東山家に拝領の皿,壊した者は指を切る定め/明和元(1764)年,千代,母の薬代のため,皿の道具係に−当主作左衛門の息子長助,千代を口説くが振られる−例年の節季後,皿を改めると一枚割れている−千代の指を切ろうとするところに,米搗きの権六が身代わりに立ち,さらに箱ごと皿を砕き,主人に説教−作左衛門改心−長助,自分が皿を割ったと告白−割れた皿を皿山の根方に埋める/千代と権六が結婚−粂野美作守,権六を召し抱え−江戸で弟君の紋之丞の家来に
美作津山城
 連続殺人事件
 1766年3月,渡辺織江,家来の粗相で侍に絡まれるところを浪人の松蔭が助け,美作守に召される−松蔭,小姓頭の春部梅三郎に宛てた若江の艶書を種に近習になる/1767年,重役寺島及び配下の松蔭,若殿の紋之丞を毒殺計画−話を聞かれたらしいお菊と林蔵を心中に見せかけて殺害/織江,闇討ちで殺される/梅三郎,若江と駆け落ち.途中,くせ者(実は有助)の持つ文を奪う−鴻巣の母宅へ暫く寄宿/織江を殺された祖五郎浪人.姉のお竹と信州上田へ/梅三郎の持つ文を盗もうとする賊(実は有助)から破れた文の残りを奪取.しかし惜しくも取り逃がす
鴻巣勝願寺
 松枝宿の子殺し
 1768年,有助,権六を殺そうとするが失敗−上田の祖五郎のもとへ,春部が仇との神原からの手紙.それを信じた祖五郎,春部を討ちに鴻巣へ行くが,賊から奪った文を見せられ,松蔭が謀反を企む張本人だと納得.両名,主家の美作国へ向かう−お竹ら江戸へ向かうが,途中松枝宿で供の忠平死亡.宿屋の早四郎が恋慕.忠平の霊に招かれ,お竹が外に出ている間に,早四郎が来る.五平,お竹の金を奪う心算で,誤って息子の早四郎を殺す/お竹,僧宗達とともにいったん江戸に行くが,再び祖五郎を捜しに美濃へ−途中,春部が織江を殺したと聞く−宗達,お竹を犯す.これは宗達の夢
松枝宿
 毒虫を採る老婆
 秋月喜一郎,田端に住む菜売り婆から飴屋の小金屋がハンミョウを買い集めていることを聞く−秋月,婆宅で待ち伏せ,小金屋を詰問.松蔭の謀反計画を知る/お針子が持参した古着の襟にお菊が書いた密書.それを読んだ御納戸役の川添富弥,お家騒動を知る−五郎治,毒入り水飴を病身の紋之丞へ持参−富弥,危ういところを止める.紋之丞立腹,秋月が毒味しようとするのを見て,紋之丞,富弥を許す−毒入り水飴をなめた手飼いの犬を五郎治の手下が斬る.権六,それを取り押さえ.目付取り調べ−神原兄弟,頭預けとなる/松蔭,国家老の福原を抱き込もうと宴席.能役者に化けた梅三郎,祖五郎,お竹が現れる.福原,松蔭の罪を暴露.祖五郎,仇討
田端八幡社

 はなしの足あと
 粂野美作守の領国,津山付近(圓朝地名図譜の岡山県)で噺がはじまる.続いて粂野の下屋敷,谷中三崎(台東区谷中)に舞台が移る.飛鳥山(北区王子)の出会い,春部の駆け落ち,松枝宿の子殺し,田端(北区田端)の老婆宅,橋場(台東区橋場)の商家の宴席が主な話の展開.1)江戸から鴻巣,2)織江殺し,4)上田から松井田までの道中付けがある.さらには,5)松井田から江戸で折り返し,軽井沢から新町へ戻るめまぐるしい人物の移動があるが,すべて中仙道ルートを行き来する.
 はなしの人びと
あき   粂野の側室.菊之助の母.
秋月喜一郎 あきづききいちろう   江戸屋敷の重役.
川添富弥 かわぞいとみや   紋之丞の御納戸役.
神原五郎治 かんばらごろうじ   紋之丞の家臣.松蔭側.兄.
神原四郎治 かんばらしろうじ   紋之丞の家臣.松蔭側.弟.
きく (1749-1767.09) 松蔭に奉公.秘密知り殺される.
菊之助 きくのすけ (1761頃-) 紋之丞と側室お秋の方の子.登場しない.
木具屋岩吉 きぐやいわきち (1710-1768頃) 本郷春木町.お菊の父.
喜六 きろく (1703-) 渡辺織江の老僕.王子で侍に絡まれる.後に上田に戻ったらしく,祖五郎が訪ねようとする.
粂野美作守高義 くめのみまさかのかみたかよし [1734-] 勝山城主.病身.登場しない.
小金屋源兵衛 こがねやげんべえ   白山の飴屋.斑猫集め毒入り水飴を製造.
五平 ごへい (1710-) 松枝宿の宿屋主人.お竹,船上が泊まる.
権六 ごんろく   行田出身.東山の米搗き.紋之丞に召し抱え.忠義の見回りで,不審の有助捕らえ処罰受ける.森山勘八を捕らえる.
宗達 そうたつ (1734頃-) 美濃の南泉寺の弟子.お竹と旅.
たけ (1748頃-) 渡辺織江の娘.
千代 ちよ (1746-) 東山に奉公.皿を割った濡衣を救った権六と結婚.
長助 ちょうすけ (1734-) 東山の子.先妻は死亡,千代に恋慕.
なみ (1738頃-) 秋月の妻.
早四郎 はやしろう (1744-1768.8) 五平の子.お竹に艶書送る.五平に誤って殺される.
春部梅三郎 はるべうめさぶろう (1745-) 秋月の甥.小姓若江と密通し,逐電.松蔭を討つ.
東山作左衛門 ひがしやまさくざえもん   美作東山村.義政より拝領の皿を割った者は指切る掟.
福原数馬 ふくはらかずま   紋之丞の国家老.
船上忠平 ふながみちゅうへい (1745-1768) 渡辺織江の家来.お菊の兄.松枝で病死.
平馬 へいま   春部の父.登場しない.
松蔭大蔵 まつかげだいぞう (1739頃-1768.08.14) 権六の旧知.紋之丞を毒殺し菊之助を擁立する計画.
松蔭大之進 まつかげだいのしん   松平越後守家臣.大蔵の父.登場しない.
むら (1739頃-) 川添富弥の妻.
森山勘八 もりやまかんぱち (1736頃-) 手飼いの犬を斬るところを権六に捕まる.
紋之丞前次 もんのじょうちかつぐ (1744頃-) 粂野美作守の弟.病身ゆえ毒殺されそうになる.
有助 ゆうすけ   松蔭の家臣.按摩の宗桂として春部から密書奪取に失敗,権六殺害に失敗.
林蔵 りんぞう (-1767.09) 松蔭の家来.松蔭に殺される.
若江 わかえ (1750-) 春部と駈落ち.
渡辺織江 わたなべおりえ (1711頃-1767.09.13) 紋之丞の御留守居役.松蔭に殺される.
渡辺祖五郎 わたなべそごろう (1751-) 織江の子.お竹と信州へ.後に春部と松蔭を討つ.

掲載 090101/最終更新 210101

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