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英国孝子ジョージ・スミスの伝   
−えいこくこうしじょーじすみすのでん−

　翻案もの．明治18年の出版．ジョージスミス自身は出てこないが，清水重次郎伝ではしまりがない．取り立てたストーリーではなく，どこに創作意欲をそそられたのだろう．渡良瀬川沿いで死体を積んだ車を曳く場面が印象的．
　大あらすじ
　金をめぐる殺人．証拠隠滅を謀ろうとすると証拠が現れるというどんでん返し．
　２つの殺人
　士族の春見丈助，明治に入り宿屋を開くが失敗−井生守，丈助へ百円の借金を催促−清水助右衛門宿泊し，虎の子の財産３千円を丈助へ預け，預かり証とひき替え．西洋床屋の文吉に会うと，丈助は信用できない奴だと聞く．さっそく金を取り返そうとする−既に百円を返済に使い込んでおり，丈助，清水を殺害．井生守，証書を懐にいれる−死体処理を井生守に任せる−佐野で死体を捨てようと，藤岡で船を降り，人力車に乗ったが，車夫の嘉十が死体の腐臭に気づく．嘉十も殺害．死体を焼却
藤岡の街道
　犯人の手がかり
　７年後，丈助，事業に成功．一方清水助右衛門の息子の重二郎は零落して車夫に−重二郎，丈助に借金を申し込むが断られる−井生守，証書をネタに丈助に千円無心／重二郎宅へ掛取．因業婆のお虎が立て替えし，重二郎の姉のおまきに旦那を取って借金を返すよう勧めるが断られる．借金のかたに形見の金の観音像を取りあげる−屋根屋の清次郎，10円でおまきを買おうとする．おまき納得したが，いざとなると拒む−清次郎，観音像を見ておまきが助右衛門の娘だと知る−高橋のたもとで丈助と井生守が密談しているところを，清次郎が立ち聞きし，仇の居所を知る／おいさ，重二郎に恋心を打ち明ける
井上安治　霊岸島高橋
　第３の殺人
　丈助，井生守から３千円の預かり証を取り返そうとするが失敗．井生守を殺し，家に放火−天井に隠していた預かり証が火事で落ち，これを清次郎が拾う−重二郎と清次郎，丈助に証書を突きつけ，利息込み4470円を取り返し，更に清水助右衛門殺しを追求−丈助割腹．身代を重二郎に譲り，いさと結婚させる−清次郎はおまきと結婚 　

　はなしの足あと
　佐久間町（千代田区神田佐久間町）の春見の宿屋での殺人が発端で，死体を船で古河まで運ぶ道中が出てくる．さらに藤岡で死体の始末をつける．高橋（中央区八丁堀）は，井上安治が描いたような鉄橋に掛けかえられていたかもしれない．第３の殺人は，高橋にほど近い新湊町（中央区湊）で起きる．
　はなしの人びと
いさ いさ エリザ．12歳．春見の養女．重二郎と結婚．
井生守又作 いぶもりまたさく ナタンブノル．35歳．元は春見の下役．車夫を殺す．重二郎と同長屋．春見丈助に殺される．
江戸屋清次郎 えどやせいじろう エドワルド・セビル．30歳．屋根屋棟梁．
嘉十 かじゅう 賭博打ち．車夫．井生森に殺される．
清水重二郎 しみずじゅうじろう ジョージ．17歳．助右衛門の子．
清水助右衛門 しみずすけえもん スマイル・スミス．前橋竪町の御用達．春見丈助に殺される．
虎 とら おまきの近所に住む因業婆．
花 はな おいさの実母．登場しない．
春見丈助利秋 はるみじょうすけとしあき ジョン・ハミールトン．元前橋藩の重役．宿屋業．清水ら殺す．
文吉 ぶんきち 西洋床屋．
まき まき メアリ．重二郎の姉．

掲載 090101／最終更新 100805

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