HOME >> はなしの名どころ >> prev 吾妻の猪買い next
埼玉県−吾妻の猪買い   
圓朝地名図譜
 談志さんから話があって、その面白くも何んともない噺を東京風に造り変えてくれませんかという。…(中略)…猪の出そうな処、これは何処でもいいが、そこへ行く迄の道すがら、遠ければ遠い程いいから、旅を懸ける道中附を演りたい、というのだ。
 (「吾妻の猪買い」解題)
  藤浦敦,『定本 九州吹戻し』,新人物往来社(2001)
 
地点名 この1題・登場回数 位 置 備 考 写真と撮影年
戸田川 とだがわ 西海屋騒動(三芳屋 (1902))など 東京都〜埼玉県 立川談志の依頼で,上方落語の「池田の猪買い」を藤浦敦が東京ものに改作した.上方版では大坂から雪のちらつく池田まで約20キロ,それに対して本郷から秩父まで100キロのルートに100以上の地名が出てくる.荒川を越えて埼玉県に入ってから秩父山中まで,原作「吾妻の猪買い」と談志が演じた「猪買い」の両バージョンに出てくる道中付けを一日でたどった.しかも,おあつらえ向きに大雪の日のことだった.
原作・談志演の両者に登場.秩父の猪肉を買うために,早朝,本郷を発った八五郎は埼玉県境の戸田川(荒川)を渡船で渡る.
"戸田の里では戸田川と称い、やがて下って浅草川"(猪買い)
戸田川 2008
戸田の渡し とだのわたし 深緑磯の松風(東錦, 5 (1892)) 戸田市川岸1〜東京都板橋区舟戸2 原作・談志演の両者に登場.中山道,荒川下流の渡.「吉原百人斬」江戸節お紺殺し,雪の戸田の渡しの場面にも登場する.
"戸田の渡しへかかってきた"(猪買い)
戸田渡船場跡 2008
下戸田村 しもとだむら   戸田市 原作のみに登場.戸田の渡の埼玉県側.
"渡船に乗り、着いた処が下戸田村"(吾妻の猪買い)
     
戸田新田 とだしんでん   戸田市 原作・談志演の両者に登場.
"こいつを渡ると戸田新田、元蕨"(猪買い)
     
元蕨 もとわらび   戸田市 原作・談志演の両者に登場.
"元蕨、蕨の宿から"(猪買い)
     
わらび 戸田の渡し(お紺殺し)(三一正蔵芝居噺:02) など 3件3題 (圓朝1件, 東京2件) 蕨市 原作・談志演の両者に登場.中山道の宿場.駅から宿は離れている.本陣跡などの整備が著しい.
"蕨の宿からやがて浦和"(猪買い)
蕨宿本陣跡 2008
土橋 どばし   蕨市か 原作・談志演の両者に登場.蕨市錦町とさいたま市南区辻との境を流れる笹目用水に架かっていた境橋のことではないか.土橋ではなく,木橋だったという.
"土橋を渡れば辻村"(吾妻の猪買い)
境橋 2022
辻村 つじむら   さいたま市南区辻 原作のみに登場.ここからは旧浦和市.日本橋から5番目の一里塚があった.現在は,弁財天を祀る小公園に碑だけがある.
"辻村、根岸"(吾妻の猪買い)
辻の一里塚の跡碑 2022
富士見 ふじみ   さいたま市南区根岸,白幡あたり 原作のみに登場.地名かどうか不明.このあたり富士山がよく見えたのは確か.
"此の辺り富士見と申し富士のお山が良くみえる"(吾妻の猪買い)
     
根岸 ねぎし   さいたま市南区根岸 原作のみに登場.街道名物の焼米屋には触れられていないが,この先,白幡にかけては今も焼米坂の名がついた坂が残る.焼米を名物として提供する茶店があったことによる名前.
"辻村、根岸"(吾妻の猪買い)
焼米坂 2022
白幡 しろわた   さいたま市南区白幡 白幡(しらはた).原作のみに登場.街道からははずれるが,都市公園的な白幡沼がある.市民の憩いの場になっている.昔はボート遊びもできた記憶がある.
"白幡、岸、と参りまして"(吾妻の猪買い)
白幡沼 2022
きし   さいたま市浦和区岸町 原作のみに登場.次項の調神社がある.
"此の岸村にござんす調神社"(吾妻の猪買い)
     
調神社 みつぎじんじゃ   さいたま市浦和区岸町3 調神社(つきのじんじゃ).原作のみに登場.徴税の調に由来するが,月の兎ということで,狛犬の代わりにウサギが鎮座している.手水舎もウサギの意匠.本郷をスタートして,まだこの時点では夜が明けきっていなかった.
"調神社は狛犬の替りに兔が両の脇を固めて"(吾妻の猪買い)
調神社手水舎 2008
浦和 うらわ 反対車(立名人名演10:16) など 5件4題 (東京5件) さいたま市浦和区 原作・談志演の両者に登場.中山道の宿場だが,宿の名残は少ない.月次市が立つことで知られており,市場通りの名を残す.農婦は特産の芋を突きだしている.
"浦和は江戸より五里三十丁とは大分遠い所でありますが別に見所は御座いません"(吾妻の猪買い)
市場通り農婦像 2008
針ヶ谷 はりがや   さいたま市浦和区針ヶ谷 原作のみに登場.
"針ヶ谷を行きますと武蔵国一之宮"(吾妻の猪買い)
     
大宮 おおみや 五段目(講明治大正7:02) など 10件9題 (圓朝3件, 東京7件) さいたま市大宮区 原作・談志演の両者に登場.中山道の宿場.もとは氷川神社の門前町.
"大宮宿、上尾"(猪買い)
     
氷川大明神 ひかわだいみょうじん とろゝん(講明治大正7:26) 1件1題 (東京1件) さいたま市大宮区高鼻町4 原作のみに登場.武蔵一ノ宮.氷川神社の総社.一の鳥居から長い参道が続く.東方,見沼田んぼには氷川女体社がある.
"大宮氷川神社の在します大宮宿"(吾妻の猪買い)
氷川神社楼門 2008
土手 どて   さいたま市大宮区土手町 原作のみに登場.大宮駅北方.土手の大椎は街道西側,狭い敷地に2本の椎の巨木が並んでいる.
"土手から大成"(吾妻の猪買い)
土手の大椎 2008
大成 おおなり 塩原太助伝(角川円朝7:32) さいたま市北区大成あたり 原作のみに登場.東側を中山道が通る.新幹線高架下の大成駅は鉄道博物館駅に改称された.
"大成、加茂宮には"(吾妻の猪買い)
     
加茂宮 かものみや 塩原多助一代記 (角川円朝5:01) 1件1題 (圓朝1件) さいたま市北区宮原町あたり 原作のみに登場.加茂神社を鎮守とする中山道の立場.用例は神社そのものになる.
"加茂宮には今日の鴨神社の御末社が鎮座坐しまし"(吾妻の猪買い)
加茂神社 1997
吉の原 よしのはら   さいたま市北区吉野町 原作のみに登場.原村とも.今の吉野町あたりのこと.
"吉の原、馬喰新田"(吾妻の猪買い)
     
馬喰新田 ばくろしんでん   上尾市栄町あたり 原作のみに登場.別所とも.馬喰新田バス停がある.
"馬喰新田、下上尾"(吾妻の猪買い)
     
上尾 あげお おさん茂兵衛(青圓生10:05) など 2件1題 (東京2件) 上尾市 原作・談志演の両者に登場.中山道上尾宿は明治元(1868)年の大火で焼失した.講談になった"赤尾の林蔵"最期の舞台なのだが,宿場として見るべきものが残っていない.飯盛りのお玉の墓は遍照院にある.楼主が墓を立てるのは異例のこと.
"上尾、桶川"(猪買い)
遍照院遊女お玉墓 2008
下上尾 しもあげお   上尾市 原作のみに登場.
"下上尾、上尾とやって来て"(吾妻の猪買い)
     
上上尾 かみあげお   上尾市 原作のみに登場.
"上上尾村と言うややこしい名前の村から"(吾妻の猪買い)
     
沖村 おきむら   上尾市か 原作のみに登場.
"沖村、久保"(吾妻の猪買い)
     
久保 くぼ   上尾市久保 原作のみに登場.
"久保、門前"(吾妻の猪買い)
     
門前 もんぜん   上尾市西門前あたり 原作のみに登場.西門前の町名が残る.
"門前、上村"(吾妻の猪買い)
     
上村 かみむら   上尾市上 上村(かみむら).原作のみに登場.雷電神社がある.
"上村、桶川、と此処までが上尾から三十丁"(吾妻の猪買い)
     
桶川 おけがわ 正直清兵衛(講明治大正6:34) など 5件5題 (圓朝3件, 東京2件) 桶川市 原作・談志演の両者に登場.中山道の宿場.府川本陣遺構,明治天皇行在所,南北木戸の碑がある.
"桶川、鴻ノ巣"(猪買い)
南木戸址 2008
二ツ家 ふたついえ   北本市二ツ家 原作のみに登場.
"二ツ家またの名を下加納"(吾妻の猪買い)
     
下加納 しもかのう   桶川市加納 原作のみに登場.ここから中山道を離れて加納天神に向かう.
"下加納には加納天神なる社"(吾妻の猪買い)
     
加納天神 かのうてんじん   桶川市加納 原作のみに登場.上加納の鎮守なので下加納にあるという説明はおかしい.現在は,下加納の氷川社を合祀し,加納氷川天満神社と称する.この時点で,うっすら雪が積もりはじめていた.
"加納天神なる社が有り"(吾妻の猪買い)
加納天神 2008
天神の湯 てんじんのゆ   桶川市加納 原作のみに登場.天神社には,旅人も立ち寄った薬湯があった.これに用いた井戸が天神境内に残っている.
"御前に天神の湯と呼ぶわかし湯が出で"(吾妻の猪買い)
天神の井戸 2008
下丸 しもまる   北本市中丸あたり 原作のみに登場.本宿手前.中丸の地名は残っているが下丸は見あたらない.
"下丸、本宿"(吾妻の猪買い)
     
本宿 もとじゅく   北本市本宿 本宿(もとじゅく).原作のみに登場.鴻巣に移る前の宿場だった.
"本宿、東間"(吾妻の猪買い)
     
東間 あずま   北本市東間 東間(あずま).原作のみに登場.
"東間、と過ぎ"(吾妻の猪買い)
     
浅間様 せんげんさん   北本市東間3 東間浅間神社.原作のみに登場.石段を登った高台に,木花咲耶姫を祭神とする新築社殿がある.山開きが行われる.
"浅間様の森を遠く見て"(吾妻の猪買い)
東間浅間神社 2008
上谷新田 あげやしんでん   鴻巣市人形3 上谷新田(かみやしんでん).原作のみに登場.鴻巣宿の入口."うわやしんでん"という地名もあり,日本語は難しい.
"上谷新田を通り抜け"(吾妻の猪買い)
     
鴻巣 こうのす 甲子待(講小勝:26) など 5件4題 (圓朝3件, 東京2件) 鴻巣市 原作・談志演の両者に登場.人形の町.「十八檀林」の勝願寺がある.
"鴻ノ巣、吹上の宿を過ぎるってえと"(猪買い)
勝願寺仁王門 1998
八幡 やわた   鴻巣市八幡田か 八幡(やわた).原作のみに登場.今の八幡田(はちまんでん)のことか.松山道への別れは宮前のY字路.
"八幡を行く程に箕田の立場に着きにけり"(吾妻の猪買い)
     
松山 まつやま 西海屋騒動(立名人名演01:06) 1件1題 (東京1件) 東松山市 原作のみに登場.道中付けのルートではない.愛媛県と区別するため東松山市の名で市制.写真は松山の東,吉見にある巌窟ホテル跡.個人が岩山を掘り抜いて作ったもの.2Fのバルコニーまで見えている.
"武州松山へ別れる八幡"(吾妻の猪買い)
巌窟ホテル 1997
箕田 みだ 後開榛名の梅が香 (角川円朝5:04) 全1件1題 鴻巣市箕田 原作のみに登場.羅生門で鬼の腕を斬り落とした渡辺綱の出生地.箕田碑は箕田源氏,渡辺綱の顕彰のため江戸中期に建てられた.
"箕田に居を構えたる為、箕田源氏と称したる"(吾妻の猪買い)
箕田碑 1998
追分 おいわけ   鴻巣市箕田 原作のみに登場.箕田の先で,北へ行田への道を分ける追分.脇に地蔵堂がある.
"箕田の先の追分を右へ岐れて"(吾妻の猪買い)
追分バス停 2008
おし 庖丁(集英圓生1:07) など 3件3題 (圓朝2件, 東京1件) 行田市 忍(おし)の行田.原作のみに登場.道中付けのルートではない.足袋が特産.秩父鉄道の行田市駅が本来の行田.
"忍の町でございますが、八五郎、足袋は間に合って居りますので其処へは寄らず"(吾妻の猪買い)
行田市駅 2008
中井 なかい   鴻巣市中井 原作のみに登場.鴻巣市の西端.
"中井、前砂"(吾妻の猪買い)
     
前砂 まいすな   北足立郡吹上町前砂 原作のみに登場.一里塚があった.
"前砂、砂を冠って田間宮には"(吾妻の猪買い)
     
田間宮 たまみや   鴻巣市額田あたり 原作のみに登場.道中付けでは言葉の綾で前砂の後に出てくるが,実際はずっと手前の鴻巣の部で,次項の源経基館がある.
"田間宮には、六孫王源経基公"(吾妻の猪買い)
     
源経基公館 みなもともとつねこうやかた   鴻巣市大間 原作のみに登場.鴻巣高校の南の地が清和源氏の祖,六孫王と称した源経基の館跡と伝えられる.土塁,空堀が残り,六孫王源経基城址碑がたつ.
"六孫王源経基公館の跡在りと申します"(吾妻の猪買い)
伝源経基館跡 2008
吹上 ふきあげ 後開榛名の梅が香 (角川円朝5:04) 全1件1題 北足立郡吹上町 原作・談志演の両者に登場.中山道の立場.中山道はここで大きく西へ曲がり,熊谷堤へ続く.
"吹上の宿を過ぎるってえと、皮羅"(猪買い)
吹上の町並み 1998
榎戸 えのきど   北足立郡吹上町榎戸 原作のみに登場.目薬が名物だった.
"榎戸、を越えれば、直きに波羅原"(吾妻の猪買い)
     
波羅原 ばらはら   北足立郡吹上町荊原 原作・談志演の両者に登場.荊原(ばらはら).談志演では,"皮羅"とある.
"直きに波羅原、可笑しな名前と、人に聞けば"(吾妻の猪買い)
     
久下 くげ   熊谷市久下 原作・談志演の両者に登場.荒川に沿った久下(くげ)の長土手.熊谷堤碑の後ろには権八地蔵がある.久下には2ヶ所に権八地蔵があるが,人を殺した白井権八が「わしは言わぬが,ぬしも言うな」と地蔵に話しかけられたのはどちらだろうか.
"気付いた時には通り過ぎ、久下の村だ"(猪買い)
熊谷堤碑 1997
佐谷田八丁 さやだはっちょう   熊谷市佐谷田 原作のみに登場.
"佐谷田八丁を走り抜け"(吾妻の猪買い)
     
熊ヶ谷 くまがや 吉住万蔵(青圓生11:22) など 21件15題 (圓朝5件, 東京16件) 熊谷市 原作・談志演の両者に登場.熊谷は中山道屈指の宿場.空襲で市内のおもな旧跡は焼けた.熊谷直実像は駅頭にある.須磨寺の直実と同じく,扇をかざし返せ戻せと敦盛に叫んでいる.いわゆる「御神酒徳利」の熊谷易者のポーズ.
"熊ヶ谷は源平の頃おい、一の谷の合戦で平敦盛を討ち取って手柄を立てしと名の高い"(猪買い)
熊谷直実像 2008
熊谷寺 ゆうこくじ 高麗の茶碗(角川円朝7:11) 1件1題 (圓朝1件) 熊谷市仲町43 原作のみに登場.浄土宗蓮生山熊谷寺(ゆうこくじ).敦盛を討った熊谷直実が草庵を結んだ地という.
"熊ヶ谷在に蓮生山熊谷寺としてそそり立つ"(吾妻の猪買い)
熊谷寺山門 2008
新宿 にいじゅく   熊谷市 原作のみに登場.
"新宿、下町"(吾妻の猪買い)
     
下町 しもまち   熊谷市 原作のみに登場.
"下町、上町"(吾妻の猪買い)
     
上町 かみまち   熊谷市 原作のみに登場.
"上町、征けば、程なく門前"(吾妻の猪買い)
     
門前 もんぜん   熊谷市仲町あたり 原作のみに登場.
"門前、下石原"(吾妻の猪買い)
     
下石原 しもいしわら   熊谷市石原 原作のみに登場.石原は「猫の茶碗」の茶店があったところ.
"下石原、木の橋渡って上石原"(吾妻の猪買い)
     
上石原 かみいしわら   熊谷市石原 原作のみに登場.西に秩父への道を分ける.ちちぶ道,宝登山道を示す道標が残る.
"上石原、此より右幡羅郡"(吾妻の猪買い)
宝登山道道標 2008
幡羅 はたら 塩原太助伝(角川円朝7:32) 熊谷市幡羅町など 原作・談志演の両者に登場.談志演の"秦野の郡"は誤り.道中付けは幡羅(はたら)の方へは向かわない.
"此れより右幡羅郡、そっちへ往っちゃァ道が違う"(吾妻の猪買い)
     
荒川 あらかわ 引窓与兵衛(立名人名演02:08) 1件1題 (東京1件) 埼玉県 原作・談志演の両者に登場.
"荒川を、八五郎の奴は一所懸命、秩父を目指して遡って居ります"(吾妻の猪買い)
     
大麻生 おおあそう   熊谷市大麻生 大麻生(おおあそう).原作のみに登場.
"大麻生から武川"(吾妻の猪買い)
大麻生駅 2008
武川 たけかわ   深谷市田中 武川(たけかわ).原作のみに登場.武川南方には,馬を背負って一の谷を下りた畠山重忠の墓がある.
"武川を通り越して、永田の里"(吾妻の猪買い)
武川駅 2008
永田 ながた   深谷市永田 原作のみに登場.南方に別項の赤浜の渡し.
"永田の里まで参りますと"(吾妻の猪買い)
永田駅 2008
小前田 おまえだ 熊谷堤毒死(講談雑誌, 21(4) (1935)) 深谷市小前田 小前田(おまえだ).原作のみに登場.上信電鉄南蛇井(なんじゃい)と組み合わせると引き立つ珍駅名.
"榛沢郡小前田へ入ります"(吾妻の猪買い)
小前田駅 2008
寄居 よりい   大里郡寄居町寄居 原作・談志演の両者に登場.八高線,東武東上線,秩父鉄道が乗り入れるターミナル.の割には鄙びている.
"寄居へ出た。これから波久礼を越えて秩父の郡"(猪買い)
寄居駅 2008
赤浜の渡し あかはまのわたし   大里郡寄居町赤浜〜大里郡花園町荒川 原作・談志演の両者に登場.上州から川越へ通じる脇往還.噺では,鉢形から釜伏峠へ通じるルートの紹介.主人公の八五郎は,この渡しは渡らず,寄居から西に荒川沿いを進んでゆく.川越岩と呼ばれる岩があるというので,おそらく両岸に巨岩のあった写真のところだろうが,説明板はなかった.
"赤浜の渡しを越えて、鉢形へ出ると"(猪買い)
赤浜の渡しあたり 2012
鉢形 はちがた   大里郡寄居町鉢形 原作・談志演の両者に登場.寄居市街の対岸,現在は正喜橋で寄居と結ばれる.
"鉢形へ出るとどうしても釜伏の峠を越えなきゃァならないので"(猪買い)
     
鉢形城 はちがたじょう   大里郡寄居町鉢形 原作のみに登場.荒川の南に城跡が広がる.秀吉方の城攻めを耐え,領民を救うことを条件に降伏した北条氏邦の居城.
"男衾郡鉢形に御座居ます同名鉢形城"(吾妻の猪買い)
鉢形城址 2008
釜伏峠 かまぶせとうげ   大里郡寄居町風布〜秩父郡皆野町三沢 原作・談志演の両者に登場.ここまでが,赤浜の渡しから皆野へ抜ける別ルートの記述.この往還のところどころに一里塚の案内があった.釜伏山には名水百選の風布川日本水がある.
"釜伏の峠を越えなきゃァならないので、野郎、こいつを逃げて寄居へ出た"(猪買い)
釜伏峠 2012
正龍寺 しょうりゅうじ   大里郡寄居町藤田 原作のみに登場.曹洞宗高根山正龍寺.寄居駅から徒歩.境内の桜と次項の北条氏邦の墓が出てくる.
"波久礼に正龍寺と申すお寺がござんして"(吾妻の猪買い)
正龍寺 2008
北条氏邦のお墓 ほうじょううじくにのおはか   大里郡寄居町藤田 原作のみに登場.北条氏邦は鉢形城主.正龍寺墓地の高台に4基の宝篋印塔が堂内に安置されている.文字が見づらいが,左には文□二癸巳とあるので夫人,右が北条氏邦の墓.
"此処に北条氏邦の墓が御座居ます"(吾妻の猪買い)
北条氏邦・夫人墓 2008
波久礼 はぐれ   大里郡寄居町末野 波久礼(はぐれ).原作・談志演の両者に登場.荒川沿いの難所.今も鉄道と道路が寄り添っている.
"これから波久礼を越えて"(猪買い)
波久礼駅 2013
末野 すえの   大里郡寄居町末野 原作のみに登場.
"末野村を通り、いよいよ秩父郡矢那瀬村"(吾妻の猪買い)
     
矢那瀬 やなせ   秩父郡長瀞町矢那瀬 原作・談志演の両者に登場.
"矢那瀬村へと踏み込んできた"(猪買い)
     
滝の上 たきのうえ   秩父郡長瀞町野上下郷 原作・談志演の両者に登場.樋口駅あたり.
"滝の上、野上"(猪買い)
     
井戸 いど   秩父郡長瀞町井戸 原作のみに登場.井戸のみ荒川右岸.
"川伝いに、滝の上、井戸"(吾妻の猪買い)
     
野上 のがみ   秩父郡長瀞町 原作・談志演の両者に登場.長瀞町に合併前の旧野上村.駅前に宮澤賢治の歌碑,"盆地にも今日は別れの本野上駅にひかれるたうきびの穂よ".
"野上、やがて皆野"(猪買い)
野上駅 2013
親鼻 おやはな   秩父郡皆野町皆野 原作のみに登場.荒川右岸.親鼻駅がある.
"鼻息荒く、親鼻、を通り越し"(吾妻の猪買い)
親鼻駅 2008
藤谷淵 ふじやのふち   秩父郡長瀞町長瀞 原作のみに登場.現在の長瀞.今の長瀞駅も元は藤谷淵駅だった.
"藤谷淵、金崎"(吾妻の猪買い)
     
金崎 かなさき   秩父郡皆野町金崎 原作のみに登場.荒川左岸.
"金崎、国神、から"(吾妻の猪買い)
     
国神 くにがみ   秩父郡皆野町国神 原作のみに登場.荒川左岸.
"国神、から、皆野"(吾妻の猪買い)
     
皆野 みなの   秩父郡皆野町皆野 原作・談志演の両者に登場.秩父音頭発祥の町とされる.秩父音頭自体,有名とは言えないが.鳥も渡るかあの山越えて♪.
"皆野……大野原を駆け抜けるようにして"(猪買い)
皆野駅 2008
小杜 こもり   秩父市小柱か 不明.原作のみに登場.皆野の対岸の小柱(おばしら)かもしれない.
"皆野、小杜村と過ぎて"(吾妻の猪買い)
     
黒谷 くろや   秩父市黒谷 黒谷(くろや).原作のみに登場.日本最初の銅を産出,和同開珎の鋳造に使われた.露天掘跡が見学できる.銅洗堀の谷筋に巨大な銅銭のモニュメントがある.
"やっとの思いで黒谷村"(吾妻の猪買い)
和銅遺跡 2008
大野原 おおのはら   秩父市大野原 原作・談志演の両者に登場.
"大野原を駆け抜けるようにして着いたのが"(猪買い)
大野原駅 2008
秩父 ちちぶ 樟脳玉(青圓生05:07) など 9件9題 (圓朝3件, 東京6件) 秩父市 原作・談志演の両者に登場.秩父には猪も熊もいた.だいぶ傷みが来ているが猪鍋の看板を正丸峠に発見.
"秩父で有名な武士はってえと、平朝臣、畠山重忠"(猪買い)
猪鍋の看板 2008
秩父大神妙見宮 ちちぶおおかみみょうけんぐう   秩父市馬場町 原作・談志演の両者に登場.秩父神社.北辰妙見神のほか,大黒天を祀る.極彩色の彫刻で埋められており,拝殿左には左甚五郎作,子育ての虎がある.
"秩父大神妙見宮、八五郎は道中の無事を祈って御参詣を致し"(吾妻の猪買い)
左甚五郎の虎 2008
武甲山 ぶこうさん   秩父市,秩父郡横瀬町 原作・談志演の両者に登場.標高1295m.石灰石の採掘により山頂までえぐり取られ,異様な山容になっている.横瀬と浦山口から登山道がある.
"登らず仰いだ武甲山が紫色に変わってきたから"(猪買い)
武甲山 2008
妙見山 みょうけんやま   秩父市,秩父郡横瀬町 原作・談志演の両者に登場.焼失した秩父妙見宮が移されたことによる,武甲山の別名.
"妙見山でケンケンと鳴きます雉子の声"(猪買い)
     
社殿 おやしろ   秩父市,秩父郡横瀬町 原作・談志演の両者に登場.武甲山頂の妙見社の社殿のこと.現在は御嶽神社と呼ばれ,やはり南面している.
"武甲山の頂にある社が、どっちを向いていたか"(猪買い)
御嶽神社拝殿 2022
上影ノ森 かみかげのもり   秩父市上影森 原作・談志演の両者に登場.通常宿の上下は江戸側が下なので,この順は変.上影森バス停も下影森バス停よりも奥側にある.
"上影ノ森から下影ノ森"(吾妻の猪買い)
上影森バス停 2008
下影ノ森 しもかげのもり   秩父市下影森 原作・談志演の両者に登場.
"下影ノ森から上影ノ森"(猪買い)
下影森バス停 2008
中川 なかがわ   秩父市荒川久那あたり 原作・談志演の両者に登場.
"中川から日野を越えますと"(猪買い)
武州中川駅 2008
上田野 うえたの   秩父市荒川上田野 原作のみに登場.荒川村の大字名だった.
"上田野、日野から白久の里"(吾妻の猪買い)
     
日野 ひの   秩父市荒川日野 原作・談志演の両者に登場.
"日野を越えますと、白久の里から"(猪買い)
武州日野駅 2008
白久 しろく   秩父市荒川白久 原作・談志演の両者に登場.
"白久の里から、やがて贄川へ入って参ります"(猪買い)
白久駅 2008
贄川 にえかわ   秩父市荒川贄川 原作・談志演の両者に登場.
"贄川へ入って参りますと、あたりはもうあらかた秩父の山ン中でござんす"(猪買い)
贄川を望む 2008
大滝 おおたき   秩父市大滝 原作・談志演の両者に登場.この先,栃本行きのバスは雪で運休になった.「猪買い」の旅は,電車・バスを使ってもここでタイムアップとなる.もちろん,冷えの病に苦しむ旅人が猪肉を求めて,ここまで歩いて来られるわけもない.
"此の大滝に猟人の六郎太夫てえ人がいてな"(猪買い)
大滝集落 2008
新大滝 しんおおたき   秩父市大滝 原作・談志演の両者に登場.
"新大滝から古大滝村"(猪買い)
     
古大滝 もとおおたき   秩父市大滝 原作・談志演の両者に登場.
"古大滝村、やがて目指す大滝村栃本へ"(猪買い)
     
栃本 とちのもと   秩父市大滝字栃本 原作・談志演の両者に登場.ここで道中付けはおしまい.栃本の猟師を無事訪ね,主人公は猪狩りに同行する.谷に転げ落ちそうな斜面に張りついた集落は必見.
"栃本へ来た時には、さすがの野郎も青息吐息"(猪買い)
栃本集落 2008
栃本の関所 とちのもとのせきしょ   秩父市大滝字栃本 原作・談志演の両者に登場.雁坂峠を越えて甲州に通じる秩父往還の関所.幕末の建物が残る.
"ヒョイと見るってえと関所がある"(猪買い)
栃本関所跡 2008
甲武信ヶ岳 こぶしがたけ   埼玉県,山梨県,長野県 甲武信ヶ岳(こぶしがたけ).原作・談志演の両者に登場.標高2475m.文字通り,甲州武州信州にまたがる荒川の水源.写真では右から3分の1位のところのピークがそれ.
"甲州・武州・信州の三つに跨がる山で甲武信ヶ岳という"(猪買い)
甲武信ヶ岳を望む 2008
十文字峠 じゅうもんじとうげ   秩父市〜長野県南佐久郡川上村 原作のみに登場.甲武信ヶ岳の北,県境を越えて佐久平にいたる.
"十文字峠を越えますと信濃国佐久平へ"(吾妻の猪買い)
     
雁坂峠 かりさかとうげ   秩父市〜山梨県東山梨郡三富村 雁坂峠(かりさかとうげ).原作のみに登場.日本三峠の一つ.甲武信ヶ岳の南,県境を越えて甲州へぬける.雁坂トンネルが開通して,車で越えられる国道になった.
"雁坂峠を越えて行くと甲斐国山梨郡川浦村へ"(吾妻の猪買い)
雁坂峠歌謡碑 2008
白子 しろこ 西海屋騒動(立名人名演01:06) 1件1題 (東京1件) 和光市白子 原作・談志演の両者に登場.川越街道の宿場.秩父へ至る第二のルートの説明.
"白子から川越"(猪買い)
白子宿通り 1999
河越 かわごえ 大工調べ(青小さん2:10) など 41件20題 (圓朝2件, 東京39件) 川越市 川越.原作・談志演の両者に登場.川越の芋で売り込んだ小京都.仙波東照宮,喜多院,時の鐘.
"川越、小川"(猪買い)
川越時の鐘 2011
小川 おがわ   比企郡小川町小川 原作・談志演の両者に登場.引き続き第二ルート.小川は和紙づくりで有名.
"小川、坂本"(猪買い)
小川和紙の里 2017
坂本 さかもと   秩父郡東秩父村坂本 原作・談志演の両者に登場.粥新田峠東方にあたる.
"坂本から粥新田峠を越えて"(吾妻の猪買い)
坂本バス停 2022
粥新田峠 かゆしんでんとうげ   秩父郡東秩父村坂本〜皆野町三沢 粥新田(かゆにた)峠."かゆしんでん"ではない.原作・談志演の両者に登場.標高540m.関東ふれあいの道.車で峠までゆくことができる.ヤマトタケル東征の際,ここで粥を煮たからと言う.川越から秩父へ抜ける往還で,秩父札所第一番にも近い.
"粥新田峠で、三沢"(猪買い)
粥新田峠 2012
三沢 みさわ   秩父郡皆野町三沢 原作・談志演の両者に登場.粥新田峠西方.釜伏峠からの往還と粥新田峠越えの道がここで出会う.
"三沢から高篠へ入って"(猪買い)
三沢八幡三層笠鉾 2022
高篠 たかしの   秩父市山田 原作・談志演の両者に登場.三沢の南,高篠鉱泉がある.横瀬川を渡ると秩父.ここまでが第2ルート.
"高篠へ入って秩父の大宮へ抜ける道"(猪買い)
高篠観光案内板 2022
飯能 はんのう のめる(講落語全集1:28) など 4件3題 (圓朝1件, 東京3件) 飯能市 原作・談志演の両者に登場.秩父に至る三番目のルートの説明.この第三ルートは西武秩父線に沿っている.飯能は都心に近いスイッチバック駅.
"飯能、吾野"(猪買い)
飯能駅 1998
吾野 あがの   飯能市吾野 吾野(あがの).原作・談志演の両者に登場.吾野集落の最寄りは西吾野駅.
"吾野、正丸峠越えて"(猪買い)
吾野駅 2008
正丸峠 しょうまるとうげ   飯能市〜秩父郡横瀬町芦ヶ久保 原作・談志演の両者に登場.標高667m.旧道は歩行者専用,峠は完璧な鞍部になっている.訪問当時,最寄りの長渕まではバスが日に3本程度あった.
"正丸峠越えて秩父大宮へ入る"(猪買い)
正丸峠 2008

掲載 050610/最終更新 240301

   表の項目の説明

HOME >> はなしの名どころ >> prev 吾妻の猪買い next