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国生みの島からすみのゑへ  行程・地図
 今回は淡路島から鳴門のうず潮を体験し,岡山から神戸,大阪へと抜けるラーメンのナルト模様のようなルートの旅.神戸から明石海峡大橋を渡って淡路島に入るP型ルートも考えてみたが,大橋通行料とレンタカー乗り捨て代が高く,あっさりとあきらめた.

 6月1日,大潮.どうせうず潮を見るならば大潮がいいということで,この日に出発.調べてみると観潮のベストタイムは干潮満潮時だそうだ.どうして潮位の変動の大きい干満の境目がダメなのか,よくわからない.できれば淡路島の最奥部に行ってから,戻りつつ時間配分したいところだが,潮の都合で12時近くまで鳴門にいないといけない.鳴門大橋上にはガラス張りの展望施設があり,そこへ行って渦を見下ろして潮待ちする.その後乗ってみた観潮船は視線が低く,橋の上ほど渦が見えなかった.せっかく大潮を選んではみたが,1回のチャレンジで船が飲み込まれそうなほどの渦に出会えるはずもなかった.自然を相手にするのは流氷観光にも相通じるところ.体験できたことで大満足だ.


鳴門のうず潮
  ここからは淡路島を一気に駆け上がり,北端の岩屋へ行く.噺には"岩屋の鼻"で出てくるので,明石側から見た景色だ.時間がないので名勝の絵島を見ただけで移動.ここからは歌枕の松帆の浦へも近い."待つ"と"松"をかけるためにあるような歌枕ではないだろうかと勝手に想像する.
 再び高速を南下して洲本へ向かう.城下町ということで洲本城を攻略,といっても大手まで車ではいるお手軽登城.洲本城は登り石垣の遺構が見どころということだが,落語地名としては,淡路島一の芝右衛門狸をはずせない.この狸,木の葉を細工して道頓堀は中座見物を繰り返した.ある日,狸ということが顕れて袋だたきにあったが,その日を限りに芝居が不入りとなる.あわてて中座は芝右衛門狸を祀ったという.爆発炎上する中座から,無事に芝右衛門狸どのが逃げ出せたか気になるところだが,今は,洲本城の天守前に無事お祀りされている.両手に抱いた木の葉と赤フンの取り合わせが,実にチャーミングだった.


芝右衛門狸
 続いて淡路島南の海岸を時計回りにずっと走る.淡路島からの遠距離通勤を描いた中島らもの「神も仏もアルマジロ」に出てくる地名3件を追うルートだ.モンキーセンターは餌付けされた野生ザルを見せる施設で,島南岸の中央部,もっとも辺鄙なところにある.由良からの道は狭く,目的意識がないと"ナゾのパラダイス"に引き込まれたりして,たどり着くことができない.負けじとおサル君も道案内しているが,"ナゾのパラダイス"のインパクトは強烈だ.路線バスの方は廃止されたとばかり思っていたが,6時,14時,18時と3往復残っていた.あれーっ,これでは観光客は14時のバスで行っても,バスが終点から折り返してくる6分しか滞在できないではないか!とはいうものの,原付で来た若い女性ライダー3人組がすぐに入園してきたりして,意外やそこそこの盛況だった.さすが中国四国のサルは性格も穏和で,ヒトには無関心そのもの,荷物を襲ったりしない.


モンキーセンターご案内
 南淡町(原作では淡南町)は,合併によって南あわじ市になって消滅した.分庁舎として利用されている南淡庁舎,公民館をカメラに収めて,再び島の中心部へ.淡路島は落語地名と言うよりは,むしろ「淡路」の曲にちなむ土地で,国生みを言祝ぐ石殷[石偏に殷]馭廬島(おのころじま),二ノ宮,天の浮橋などの謡跡がある.おのころ島の候補は,淡路島自身,島南部の沼島,先ほど見てきた東部の絵島などいくつかあるらしい.おのころ島神社は,まさに国生みの地とされており,神社の西400mほどのところにイザナギ・イザナミが天の沼矛を持って立った天の浮橋の遺跡がある.もっとも見たかったここが,本日最後のポイントとなる.ここまでを急いだおかげで十分に見学時間が取れた.


日本の始まりおのころ島神社
 再び四国に戻り,鳴門からは鉄道での移動.鳴門線は初乗り,といってもわくわくする訳ではないが...バス停のような駅名の金比羅前,教会前と過ぎてゆく.そういえば京急の平和島は,もと学校裏駅だったっけ.淡路島はタマネギ畑ばかりだったが,鳴門に来ると鳴門金時畑やハス田に一変する.高徳線との乗り換えの池谷は極端なY字型駅で,股間の中庭を抜けて改札に出る構造.さらに列車を乗り継いで児島泊.言っては何だが,下津井にも鷲羽山にも行けないのに児島に泊まらなければならないのが辛い.


池谷駅
 「紺屋高尾」の改作「ジーンズ屋ようこたん」を読むまで,児島がジーンズの町とは知らなかった.ジーンズ博物館などをめぐるジーンズバスが出ているが,つきあっている時間はもちろんない.早朝1時間ほど徒歩で染色工場などを眺めながら上の町駅まで移動して児島を離脱,岡山へ.エクスプレス予約が山陽新幹線にまで拡大したため,初めてレールスターの指定席を取ってみた.グリーン料金なしに2+2シートに座れるというだけのこと.次の目的地である醤油の町,龍野の中心は竜野駅付近ではなく姫新線の本竜野駅から揖保川を越えたあたりになる.揖保の名前で連想するように,龍野は淡口醤油に加えて素麺が名産だ.揖保川の浅瀬では,解禁になった鮎釣りを楽しむ人が見られる.鮎素麺(?)なんてものも食べられるのでは.龍野には古い町並みがしっかり残っており,泊まってみたい町だ.醤油資料館の入館料が10円とは,龍野の懐の深さを感じさせる.


白壁の醤油蔵
 これからは,神戸と大阪市内の新出落語地名を拾ってゆく.姫路からは新幹線よりも新快速の方が目的地に早く着く.まずは,住吉で途中下車し,関西きっての進学校の灘高へ.学校創設に関わった嘉納治五郎の碑が校内にあるはずで,それを見たい.最近は学校内への立ち入りがやかましく,全く入れてくれない学校もあった.碑は校門を入ってすぐのところにあり,敷地外からの撮影をお願いすると,中でOKとのこと.さすが,自主自由の校風.
 続いて中郷町,石屋川と桂枝雀(2)の幼少時の思い出の地を歩く.思い出といっても,空襲で石屋川対岸が火の海という悲惨な体験だ.枝雀師に続いて,師匠の桂米朝宅へ.上方芸能の同人誌には,住所が公開されていた.そういえば,1983年に放送されたNHK教育TVの訪問インタビューでは,"訪問"だけあって米朝師の自宅がバッチリ映っていた.最寄りの武庫之荘駅で降りると,全裸の芸術が腰を突き出して出迎えてくれる.迷いながら訪ねてみたが,残念ながら転居されていた.


武庫之荘駅
 さらに園田競馬場へ.新作,おっと創作に出てくる地名.2km近く歩いてきたものの,地方競馬の開催されない土日はスタンドに入れない.そのためばかりでなく,元気がわいてこない.さらに,このあと回った大阪市内のいずれの地点も,とりあえず意識して目に入れておこうというポイントや再訪地点ばかり.列記すれば,萩の橋あと,十三大橋,ホテルプラザ,HEP FIVE,新阪急ホテル,ホテルグランヴィア大阪,大阪ヒルトンホテル,大阪マルビル,ステーキのスエヒロ,梅新東交差点.噺には出てこないが,梅田スカイビルの構造はなんと奇抜なことだ.空中庭園からは文字通り360度の眺望が楽しめた.外国からの観光客が大勢訪れているのもうなずける.


空中庭園から
 しあげに,上方版「井戸の茶碗」に出てくる瓦屋町の土浦藩の蔵屋敷跡へ.浪人高木作左衛門の住まいで,江戸版の細川のお窓下に対応する.「井戸の茶碗」は江戸の釈種だから,土浦藩の蔵屋敷が生粋の落語地名かどうかを詮索してもしょうがない.下調べなく実地に歩いてみたところ,小学校の敷地隅に碑がみつかった.大ギリは,大阪に復活した寄席,天満天神繁昌亭へ.聞くところによると,ふらりと入る雰囲気の寄席ではなく,しかも客入りがいいということなので,中を見せてもらうのは次回とした.もし10万円の名入り提灯を募金していたら,絶対に入っていたろうが.なるほどあの提灯の数では,「死神」の目でもないと自分の灯りを見つけるのは難しそう.


天満天神繁昌亭
 今回も,まっとうな落語地名は岩屋くらいしかなかった.国生み伝説の淡路島初上陸ということでなんとなく納得したい.
2007年6月

初 日   紀行
7:25 羽田空港 8:40 徳島空港 JAL1431
9:00 徳島空港 レンタカー
9:20 鳴門
鳴門北IC 淡路IC
12:15 岩屋
淡路IC 洲本IC
13:05 洲本
14:15 モンキーセンター
15:20 南淡町
16:05 天の浮橋
西淡三原IC 鳴門北IC
17:40 鳴門
18:02 鳴門 18:20 池谷
18:36 池谷 19:31 高松 うずしお26
19:43 高松 20:12 児島 マリンライナー60
児島泊
 
2日目
児島
6:59 上の町 7:38 岡山
7:54 岡山 8:14 姫路 ひかり442
8:28 姫路 8:52 本竜野
龍野
10:11 本竜野 10:33 姫路
10:42 姫路 11:29 住吉
灘高校
11:50 甲南町5 12:13 徳井 阪神バス
中郷町,石屋川
12:43 石屋川 13:00 今津 阪神
13:07 今津 13:20 武庫之荘 阪急
武庫之荘
14:20 武庫之荘 14:25 園田 阪急
園田競馬場
14:52 競馬場 14:59 阪急園田 阪急バス
15:06 園田 15:13 中津 阪急
ホテルプラザなど
梅新東など
17:30 東梅田 17:40 谷町九丁目 市営地下鉄
土浦藩蔵屋敷
18:17 谷町六丁目 18:20 天満橋 市営地下鉄
天満天神繁昌亭
19:23 南森町 19:36 新大阪 市営地下鉄
20:10 新大阪 22:46 東京 のぞみ98

掲載 070622

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